【オランダハウス日記】陽気なデニー

2018.06.12

オランダハウスには、スタッフ用に名前がローマ字で書かれた缶バッチが支給されます。先週から仲間に加わったDannyさんが、私にところにやって来て、言いました。

 

「わたしのぉ、なまえはデニーです」
「うん、それがどうしたの?」
「これは違っています」
「Dennyが正しいの?」
「いえ、下のカタカナ。ダニーになってますね」
「えええ? だって、ダニーだって思ってたよ。ほんとはダニエルって名前を縮めてダニーなんじゃないの?」
「いえ、私の名前はDanny と書いて、デニーなんです」

 

というわけで、ダニーさんだと思っていたお人は、デニーさんなのでした。言葉ってむつかしいですね。

デニーさんは日本人の規格からすると大男の部類に入ります。その大男さんが、「はい、いらっしゃいませ〜」と言うと、たいがいのお客様は、「わあ、びっくりした。日本語しゃべった」「はい、私は大阪で日本語を勉強をしました」

あとは、デニーの独壇場で、館内を案内して回ったあとは、デニーさん手書きの「オランダ語のごあいさつ」の貼り紙を見ながら、みなさん、2分間のオランダ語講座を受けてオランダハウスを後にされます。

これで無料ですよ、お得です。オランダハウス。

 

6月3日に来られたご家族、お母さんに「このオランダ人の方、日本語を話されるんだって、何か話してみたら?」と勧められた、小学生高学年とおぼしき男の子がちょっと挑戦的にこう言いました。

「オランダ? サッカーで強いチームどこ?」
「はい、私はロッテルダムの出身ですので、地元のチームはフェイエノールトとスパタです」と丁寧に答えるデニーさん。「アムステルダムはアヤックスですけれども……」

「そうだよ、アヤックスはサガン鳥栖とパートナーシップを結んでるんだ」
「私たち、鳥栖から来たんですよ。この子はサガン鳥栖の試合には必ず行くんです」とお母さん。

 

昨年、サガン鳥栖の社長の竹原さんにインタビューをした折、竹原さんのビジネス哲学をお聞きした後、ふと「必ずしもビジネスとしては、サッカークラブはものすごくは儲からないと思いますが、なぜ、なさっているんですか?」と質問したところ、

「ぼくは、サガン鳥栖を見て育った子供たちが、大学や就職や何かで県外に巣立って行ったときに、『オレっちんとこのサッカーチーム、結構強いんだぜ』と言ってくれたらそれでいいと思って、サッカークラブ経営をやってるんです」

と言われたことを思い出しました。目の前にいるこの男の子が、その一人なんだなと思いました。

 

熱烈サガン鳥栖サポーターのお一人、ミスター田中さんは熱烈な(たぶん)オランダハウスのサポーターでもあられて、ことあるごとに、愛犬のななちゃん、くくちゃんと一緒に、様子を見に来てくれます。

オランダハウスで有田焼に絵付けするマシーン&タイルを制作中のギルスさんが、佐賀のぎょうざの名店「ぎょうざ屋」さんにまだ行ったことがないと知って、なんとテイクアウトでぎょうざを持ってきて下さいました(写真参照)。もちろん「ぎょうざ屋」さんのですよ。

ミスター田中さん、お世話かけました。

 

ものすごく根本的なことなのですが、デニーさんは大阪からやって来ました。オランダのサッカーリーグには興味はないそうですが、日本では「ガンバ大阪」の大ファンなのだそうです。デニーさんはランチに「ぎょうざ屋」さんに出掛けて行きました。

「あっ、まずいですよ」と思い出したオランダハウスのマネージャーK姫。
聞けば、ぎょうざ屋のご主人もサガン鳥栖の熱烈サポーター。うっかり、
デニーさんが「じつはガンバ大阪サポーター」だということを話したらどうする……? しかも、その日6日はデニーさんは天皇杯の試合を見に、鳥栖に行く予定になっているのでした。店内のポスターを見て、その話題になったら……。

帰ってきて、デニーさんに「どうだった? まさかガンバ大阪のこと言ったんじゃないでしょうね」と聞くと、「言いませんでした。今日、私が鳥栖の試合を見に行くことも……だって、ご主人は夜も仕事だから、サッカーの試合は見に行けないよ、と話しておられましたから、私が行くということは遠慮しました」

えらい、そこまで気遣いできるとは。

 

午後5時、私たちは鳥栖のベストアメニティスタジアムに着きました。ミスター田中さんは、お仕事を終えて、車で佐賀から向かっているとのこと。

駅前の歩道橋をわたって、スタジアム内へ。チケットを受け取りに事務棟へ向かうと、あちらから、社長の竹原さんが出てこられました。

「おや、こんにちは~」と社長。
「先日はギルスさんとお世話になりました。今日はインターンのデニーさんと試合を見せていただきます。デニーさん、こちらは社長の竹原さんです」
「オー、社長さん。こんにちは」
「社長は関西の尼崎のご出身で、大阪の高校でサッカーしてらしたんですよ」
「オオ、そう! オォーサカ!」と思わず声を張り上げる関西人デニーさん。

「デニーさんは大阪の大学で勉強されてまして、関西弁もしゃべりますので、まあ、大阪人のようなもの……」
「えっ」と、急にこちらの言葉を遮るデニーさん。あわてて、手をふって
「いえ、私は大阪人ではないですね。オランダ人ですよ。わたしぃは、オランダ人です」(だって、見ればわかるって。オランダハウスってデカデカと書かれたTシャツ着てるし)

「ナイス トゥ ミーチュー。そうですかぁ〜。僕も大阪人じゃないんですよ」と言いながら、デニーさんに握手のため手を差し出す社長。そして続けて、
「僕は宇宙人なんです」

「ハハハハハ……」と二人笑いながら、がっちり握手。

周りのスタッフの方も笑いをこらえるのに必死な様子でしたが、これぞ関西ノリ……?

陽気なデニーさんは、デスクで黙って、お仕事中のサガン鳥栖の社員の皆さんに向かって、「さあ、みなさーん、今日は勝ちましょうねえぇ~」と声をかけて退場。
す、すごい……サガン鳥栖、今日勝たなかったら大変だ、と思わないところが、ポジティブ・シンキング!

 

皆様、ご安心ください。私の心配は杞憂(きゆう)に終わり、勝利の男神?デニーさんのおかげで、サガン鳥栖はこの日、大量7点をあげて快勝したのでした。

 

(文・取材……したのかな? 樋渡優子)

2018.3.17 - 2019.1.14
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