【new!】佐賀への愛、日本への感謝 オランダ人アーティスト・ヴィクターさん講演(その3) Victor Engbers san’s final lecture(vol.3)

2018.12.29

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【沢山の「ご縁」に恵まれて、「これってホント!?」という気持ちです】

 

※以下のお話しは、その1その2の続きになります。

 

(有田焼の人間国宝・十四代今泉)今右衛門先生にお目にかかれたのは大変な名誉でした。信じがたいほど高貴な今右衛門先生の作品芸術に加え、日本の芸術全般について、素晴らしい会話をかわしました。先生は「あいまい」という言葉を使って、日本の美術の源流を私に示し、日本のアートにおいて、自然がいかに重要であるか教えて下さいました。日本人は美しく、時にとても危険な存在となる自然と長い間、生きてきたのだと。

 

私の刺繍アトリエには、話に来る人たちが沢山いらっしゃいましたが、むつごろうの形のクッキーやソックス、美しい本や素晴らしく手の込んだ小さな手芸品などを、持ってきてプレゼントしてくれました。これらの品は展示品の一つとしてテーブルの上に飾ってありますので、どうぞレクチャーの後、ご覧ください。お心づくしのこれらの品々は、私にとって、本当に宝物です。
お心づかい頂いた皆さんには御礼の言いようもありませんが、いつの日か、私も皆さんに、ご恩返しができるようにと願っています。

 

ここにいたるまで、大きなこと、小さなこと、じつにいろいろな冒険が起りました。福岡県の八女市からは女性活動家の皆さんが、オランダからはサガン鳥栖と提携しているサッカークラブ、アヤックスの少年たちがオランダハウスに訪れました。KARATE1(プレミアリーグ東京大会)に出場するオランダ人の空手のチャンピオンたちも。
私の本のキャラクター、キャプテンクヌートがお酒のラベルになったのも、とても光栄な出来事でしたし、山間(やまあい)にある美しい肥前名尾和紙とのコラボレーションも始めることができました。たぐいまれなアーティスト・山下清のことも発見しました。
キャプテンクヌートの本をベースに、キャラクターをフェルトで作った安住くり子さんの作品は、オランダハウスの近くの映画館シアターシエマで展示されました。毎日、沢山の人に訪ねてきてもらい、数えきれないほどの〝ご縁〟に恵まれて、本当に「ホント!?」という気持ちなのです
サガテレビやローカルラジオ局のえびすFMや、いろいろな新聞に、何度も取材して頂いたのも有難かったですし、佐賀県のアートフェスティバル「さがさいこうフェス」に刺繍ワークショップのブースを出したのも、楽しい思い出です。

 

そうしている間も、刺繍は続いていました。週を重ねていくうちに、私の日本体験は増えていき、刺繍の布に描かれる点と点とにつながりができるのと同じように、私自身の中の日本に関する点と点もつながっていきました。

 

私は日本の色とモチーフを学びました。日本人にとっての家族の大切さ、自然、刺繍の中に盛り込んだ「カイツブリ」という鳥の名前も刺繍に来られた方から教わりました。刺繍をしながら、カイツブリについて知ったのはとてもいい時間でしたし、いつかもっと鳥のことを教えてほしいと思います。
日本人の美味しいものへの強い愛着を知ったのもよい経験でした。日本にはオランダと違って、ピンク色の車が多いこと、花火を眺めるときに日本人が象徴的に感じるこの世のはかなさ……日本とオランダの文化的に異なる点を学びました。がしかし、それよりもっと多くの共通点を日本人と日本の中に感じました。おそらく、私たちは自分たちが思うよりずっと多くの共通点があるのだろうと思います。

 

予告していたこのレクチャーのトピックスの中には、「アートは世界を変えられるか?」というものがあったと思います。私がアートを創る目的の1つは、「アートとは何か? 美とは何か?」という問いに対する、人々の見方を変えるためです。
われわれは誰もがアーティストなんですよ、と知らしめること、私のプロジェクトの大事な役割を担っています。私はみなさんに「アートとは何ですか?」と問いたいのです。アートとは出来上がった作品だけをさすのか、それとも私たちが刺繍をするとき腰を下ろして、喋ったり、歌ったり、楽しんだりしたその過程のことをアートというのか?
それに対する確たる答えを私は持ち合わせてはいませんが、アートは人生において必要なものだとは断言できます。食べ物や水や友情や愛が、人生に必要なものであるのと同じように。そして、今回の刺繍プロジェクトは、これまでの私の世界をまったく変えました。

 

(次回に続く)

 

↑9月の終わり、刺繍プロジェクトにも沢山ご参加いただきました中本しのぶ様よりご招待いただき、初めてのお茶会に臨みました。日本の色、日本家屋、直正公ゆかりのほんもののわびさびを体現したお茶室、典雅で、温かなみなさんとの交流、

「すべてに型があるのに、すごく自由で、すごく気さくなのはなぜだろう」とビクターさんはますます日本への敬意を深めました。

 

↑ヴィクターさんが、最初に覚えた漢字は「酒」!「はい、私にとっては一番大事なものですからね、お酒は」ということでしたが、メガむつごろうの背中に乗ったキャプテンクヌートと、有明海と日本の海の模様、青海波を描いたイラストを描きました。これをお酒のボトルに貼ってくださった佐賀の酒造メーカーの方がありました。

 

↑カラテ1に出場する、オランダの空手チャンピオン3人の方が佐賀県嬉野市で合宿、東京での大会を前に、オランダハウスを訪問されました。

GEVAAR とは、オランダ語できけん!ですが、戦いの場においては危険な男たち、でも、リングを下りるとそれぞれすばらしく知的なジェントルマンでした。

オランダにいてもおそらく会う機会のないオランダ人の方たちとも沢山会った2か月半の滞在期間でした。

 

↑日本が誇る有田焼の最高峰、人間国宝の14代今泉今右衛門先生とは滞在中、数回にわたり、日本美術について、また西洋の文化との違いについて、お話しをする機会を持つことができました。先生からの教えは、刺繍作品の大事な核となりました。

 

↑地元のラジオヒーロー、佐賀弁もぺらぺらのランドリーライオさんの番組に出演。えびすFMは佐賀を活性化したいという願いで作られたローカルラジオ局です。

 

↑クヌートのラベルのついた日本酒、焼酎、梅酒のボトルをプレゼントされて……。これも佐賀県内の酒造会社の方が刺繍のアトリエに偶然こられ、言葉を交わしたことから生まれたご縁でした。

こういう不思議で、すてきなご縁に、山のように恵まれました。

 

↑帰国間近、ビクターさんの人柄に焦点をあてたドキュメンタリー番組がサガテレビで放映されました。そこでビクターさんは「佐賀に来て、自分が生まれ育ったみんなが顔を知っている小さな町のことを思い出しました。そして、強く望めば、自分も幸せになれるのだと思いました」と真情を語りました。

 

↑フェルト作家・安住くり子さん作のキャプテンクヌートの絵本の中のひとこま。クヌートはパンツとソックスを自分でお洗濯して木の間に渡したひもにかけて乾かします…。

 

↑佐賀のカソリック幼稚園の小さなお客さま。新しい布にようこそ、と日本語とオランダ語で刺繍するお手伝いをしてくれました。この刺繍はのぼりとして、佐賀さいこうフェスのビクターブースに立てられました。

 

↑刺繍プロジェクトをしながら、どんどん、佐賀と日本の文化に惹かれて行動範囲を広げていった。佐賀に一軒だけ残る、県の重要無形文化財・肥前名尾和紙の工房を訪ねる。

 

↑佐賀さいこうフェスにて。このマスクは、ヴィクターさんのキャラ、キャプテンクヌートのマスクをフェルトで作り、刺繍したもの。

 

↑佐賀さいこうフェスにて。ドゥイドゥイとは、オランダ語で、またね~の意味。

 

↑読売新聞の作品完成の記事と、放浪の画家・山下清の作品画集。山下清の貼り絵に強い関心を持っていたところに、「ビクターさんの刺繍をみてたら、貼り絵みたいだと思いました、山下清みたいに」と指摘されて驚いたことも。

 

翻訳・文 オランダハウス広報 樋渡優子
Translation text by yuko hiwatari at the Holland House

2018.3.17 - 2019.1.14
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